研究概要 |
(1)運動時における思春期前児童の体温調節反応特性を検討するため,皮下脂肪厚および体重当たりの最大酸素摂取量がほぼ同等な7名の思春期前男児(10-11歳)と11名の男性若年成人(21-25歳)に,30℃・45%rh環境下で40%VO_<2max>の自転車運動を45分間負荷した。その結果,30℃環境下の中等度運動時において,思春期前児童は,低い発汗量に関わらず躯幹部の皮膚血管拡張をより亢進し,若年成人とほぼ同等に深部体温を調節した。さらに,若年成人では前腕皮膚血流量が胸・背より有意に高かったのに対し,子どもの皮膚血流量には部位差がみられなかった。これらの結果は,皮膚血管の拡張の程度には発育と関連した身体部位差が存在する可能性を示唆する。 (2)昨年度に見出した子どもや高齢者にみられた寒冷反応特性が,体温調節中枢への温度入力として重要な役割を持つ皮膚冷感覚点数に起因するか否か検討するため,7名の思春期前男児,10名の男性若年成人,9名の男性高齢者の皮膚冷感覚点を測定した。子どもはいずれの部位でも若年成人や高齢者より高い皮膚冷感覚点密度を有したが、部位あたりの推定総数には年齢差はみられなかった。そのため,子どもや高齢者の寒冷反応特性には,体温調節中枢への温度入力として重要な役割を持つ皮膚冷感覚点が直接的に影響しているとは考えられないと結論された。 (3)子どもや高齢者の暑熱・寒冷反応反応とVO_<2max>や日常歩行量の関連性を検討した結果,子どもではVO_<2max>,高齢者では日常歩行量またはVO_<2max>が,暑熱・寒冷時の皮膚血管反応と関連した。また,高齢者では日常歩行量が大腿の発汗量と関連したが,子どもでは発汗量と関連する項目がみられなかった。これらの結果から,更なる検討が必要であるが,子ども・高齢者ともに運動習慣の確立が皮膚血管調節能の改善に有効な手段になり得る可能性が示唆された。
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