研究概要 |
1.本研究は,高齢者と青年を対象に,加速度外乱時の足圧中心動揺と身体関節角度を比較検討し,外乱時の高齢者の姿勢保持における身体関節応答について明らかにする。また足圧中心動揺と身体関節応答との関連性の検討を行い,高齢者の姿勢調節に及ぼす身体各関節の影響について明らかにする。さらに,下肢筋の筋放電開始時間を検討することによって,外乱に対する高齢者の姿勢調節について考察を行う。 2.身長と体重がほぼ同様な,65歳以上の高齢者7名と青年7名を対象にして,フォースプレートを支持台ごと水平移動できる移動台を用い,被験者に瞬間的な前・後方向の加速度外乱を与える。その際,足圧中心動揺(動揺距離・応答時間)および足関節・膝関節・股関節角度ならびに下肢筋の筋電図(筋放電開始時間)の測定・分析を行う。 3.その結果,前方および後方外乱ともに,足圧中心動揺からみた応答時間および動揺距離は,高齢者の方が青年に比べ有意に大きな値を示した。また外乱時の各関節角度を検討したところ,青年では足関節角度の変化が大きく,腰関節角度の変化が小さい値を示したが,逆に高齢者では足関節の動きがほとんどみられず,腰関節の動きが大きかった。また青年とは異なり,高齢者の腰関節が変化し始める時間は足関節が動き出した直後であった。さらに,高齢者の足圧中心にみられる大きな動揺の出現時間と腰関節の大きな角度変化の出現時間はほぼ一致した。筋放電開始時間では,前・後方向外乱時の足関節の伸筋と屈筋ともに,高齢者の値が青年より有意に大きな値を示した。 これらのことから,加速度外乱に対する高齢者の身体関節応答の特徴として,高齢者は外乱によって引き起こされた身体動揺を,主に腰関節の動きによって修正していることが結論される。またこの腰関節による姿勢調節が足圧中心動揺の動揺距離に影響を及ぼしている可能性が示唆される。
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