研究概要 |
本研究ではballistic contractionによる筋出力量の準備と調整について,反応時間(筋放電開始時間)を利用して時間的側面から検討するとともに,効果器からの求心性情報が筋出力の準備や調整に影響を与えるかどうかを以下の2つの主な実験によって検討した. 【実験I】各被験者の最大等尺性肘屈曲筋力を基に発揮筋力の目標値(20,40,60,80%MVC)を設定し,被験者の発揮する張力と共にオシロスコープの両面上にライン表示した.被験者は,warning signalの呈示後与えられるLEDの点灯を合図にできるだけ早く(ballisticに)目標値に筋出力を合わせる課題を行った.Foreperiodは,2〜5秒の間を0.5秒刻みでランダム順に与えた.同じ条件下で,foreperiodの間のバイブレーターによって主働筋に振動刺激を与える実験併せて行った.【実験II】実験Iと同様の方法で行ったが,実験IIでは80%MVCを発揮している状態から各目標値(0,20,40,60%MVC)に発揮筋力を合わせる課題を行った. 【結果及び考察】Premotor time(筋放電開始時間,PMT)と筋出力量(20,40,60,80%MVC)との関係は既に筆者らが報告しているとおり,ballisticな筋力発揮時には発揮筋力が大きくなるほどPMTが増大することが確認された.また,foreperiodとの関係については2秒ではPMTが大きく,foreperiodが長くなるにつれてPMTは短縮したが,4秒をこえると逆にわずかに増大する傾向に示した.また,筋出力量が大きくてもforeperiodが長ければ比較的短い潜時で筋放電が出現し,十分な準備時間があれば大きな筋出力でも素早く発揮できることを示唆している.さらに,foreperiod中に振動刺激を主働筋に与えて,筋出力のpreparationに求心性情報がどれほど影響力を持っているのかを検討したが,本研究のような課題動作の場合にはほとんどその影響が見られず,脳内プログラムによって準備・制御されていることが窺えた。実験IIについては現在分析を進めているところである.
|