研究概要 |
本年度の文献検査は、主として長崎大学附属図書館の大型コレクション(ドイツ教育史関係)と、筑波大学附属図書館(ドイツ体育・スポーツ関係専門雑誌)で行った。18世紀末から19世紀前半を調査したが、一部は20世紀に及ぶものもあった。 解読作業としては、すでに明らかにしていたゲ-ツム-ツ(Gymnastik)とヤーン(Turnen)の間の、身体に関する用語の使い方の違い(前者はKorper,後者はLeibを好んで用いた)を手がかりに、この用い方の違いの意味を1818年に行なわれたトゥルネン旅行を例に研究をすすめ、成果をまとめた(1996年5月に刊行予定の成田十次郎教授退官記念論集に「1818年のトゥルネン旅行に関する一考察」として印刷中)。 現在ブレスラウ.トゥルネン論争に検討を加えいる。これはゲ-ツム-ツ派とヤーン派の論争とも考えられ、以後のドイツ体育・スポーツ史に見られる論争(例えば平行棒論争、トゥルネン・スポーツ論争、オイラー・ヴァスマンスドルフ論争、ノイエンドルフ・メール論争)の原点ではないかとの問題意識を持ちながら解読をすすめている。中でも論争の両陣営を代表するパッソウとシュテッフェンスが1819年に同じテーマ("Turnziel“「トゥルネンの目標」)で出版した二つの文献を研究し、両者の論旨と、そこで用いられた「身体」の捉え方 (用語の違い)を明確にしようと試みている。なお、その一部を1996年2月3、4日に行われた筑波大学体育史研究会で発表した。
|