今年度は、平均身長153.4cm、平均体重40.7kg、平均BMI17.3の18歳低体重女性10名について、同年齢で身長に差がなく体重がそれぞれ異なる3群の女性の身体組成、骨塩量、最大酸素摂取量、脚伸展筋力、女性ホルモン濃度、血中蛋白分画、免疫グロブリン等と比較しながら、低体重女性の健康阻害要因とならない最低体重と至適体脂肪量を検討した。 今回対象にした低体重者、すなわちBMI17.3、体重40kg、体脂肪量12kgの青年期女子は、重水希釈法で測定した少ない体脂肪の中でも特に皮下脂肪量が少なく、除脂肪量が少ない「痩せ」であると判定された。非利き腕の橈骨遠位1/3をDEXA法で測定した骨塩量と骨密度はともに低体重群が低い値を示し、低体重者の栄養不足と運動不足が示唆された。低体重者の最大酸素摂取量と脚伸展筋力からみた体力はbody sizeそのものの小ささから体重の大きな者より劣る傾向はみられたが、除脂肪1kg当たりの値には差がなく、除脂肪組織の組成や活性には差がないと推察された。低体重者の月経周期異常は体重の重い群より高率にみられたが、estradiolやestrone、及びFSHやLHには特別な傾向はみられなかった。しかし、アルブミンとA/G比は体重の重い群に比べて有意に低い値を示した。 すなわち、今回の低体重者は皮下脂肪量が極めて少なく、骨量、最大酸素摂取量、最大筋力、及びアルブミン等に低値を示したが、顕著な健康障害には至っていない。従って、今回のデータでは健康の維持に必要な最低体重を40kg、至適体脂肪量を12kgと設定することができた。 次年度は、この最低体重と至適体脂肪量より低い「痩せ」を対象に、それらの身体組成や生理学的特性を明らかにすることによって、今回の最低体重40kg、至適体脂肪量12kgのもつ健康科学的意味をさらに明らかにする予定である。
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