本研究は思春期の女子選手を対象にして、月経現象が骨形成に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。被検者は思春期の女子運動選手18名、及び対照群10名であった。被検者の月経周期は問診によって3カ月間に渡って記録した。月経周期が26〜31日にある7名の選手を月経周期正常群とした。月経周期が26〜31日に属さない6名の選手を月経周期異常群とした。初経未発来の5名の選手を初経未発来群とした。測定項目は体重、体脂肪率、除脂肪除骨塩率、骨塩量(Bone Mineral Content;BMC)、及び大腿骨近位部の骨密度(Bone Mineral Density;BMD)であり、3年度に再調査を実施した。エラストラジオール(E2)は月経が始まって7日目に測定したが、初経未発来群については任意に測定した。体重、体脂肪率、除脂肪除骨塩率及びBMCの群間の平均値の差の比較をみると、初年度の初経未発来群は他の3群よりも体重及び体脂肪率が有意に低く、除脂肪除骨塩率が有意に高値を示し、BMCは月経周期正常群及び対照群よりも有意に低値を示した。3年度の初経未発来群は月経周期異常群及び対照群よりも体脂肪率が有意に低値を示し、除脂肪除骨塩率が有意に高値を示した。3年度の月経周期正常群及び対照群の体重は月経周期異常群よりも有意に高値を示した。各群の平均値の経年的な変化をみると、月経周期正常群の体重は有意に増加し、初経未発来群は体重及び体脂肪率が有意に増加し除脂肪除骨塩率が有意に低下し、対照群の体重及び体脂肪率は有意な増加が認められた。大腿骨近位部のBMDについて群間の平均値の差の比較をすると、初年度の初経未発来群は他の3群と比較して大腿骨頸部及びWard三角が低値を示したが有意な差には至らなかった。3年度の対照群は月経周期正常群及び月経周期異常群と比較して大腿骨近位部のBMDが低値を示したが有意な差には至らなかった。各群におけるBMDの経年的な変化をみると、対照群の大腿骨近位部は経年的に減少する傾向を示した。一方、月経周期正常群、月経周期異常群及び初経未発来群の大腿骨近位部のBMDが経年的に増加する傾向にあった。E2と大腿骨近位部のBMDとの相関は認められなかった。
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