筋収縮の速度および負荷を変化させたときの二関節筋の筋活動の特徴を研究するために、被験者に自転車エルゴメータを用いて、1)一定摩擦負荷(3kp)でペダリングスピード(50〜130rpm)を変えながら、および2)一定ペダリングスピード(60rpm)で摩擦負荷(2〜7kp)を変えながら運動を行わせた。このとき、大腿部の筋(外側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋)より表面筋電図を導出し、特に脚の伸展と股関節の伸展に作用する大腿直筋と脚の伸展のみに作用する外側広筋の筋活動に焦点を当てて分析を行った。摩擦負荷を増加させると、両筋のペダル1回転あたりの放電量(積分筋電図値μV・sec/回転)は360ワットの仕事率までは直線的に上昇したが、ペダリングスピードを増加させたときの放電量に増加はほとんど観察されず、放電量の平均値は50rpm時がもっとも大きかった。一方、毎秒あたりの放電量は、外側広筋では摩擦負荷およびペダリングスピードの増加とともに360ワットの仕事率まではほぼ直線的に増加したが、大腿直筋のそれはやや異なる傾向を示した。すなわち、大腿直筋の毎秒あたりの放電量は、摩擦負荷を変化させたときは仕事率が240ワットまでほとんど変化せず、その後指数関数的な増加を示した。また、ペダリングスピードを増加させたときの放電量は110rpm(330ワット)まではほとんど変化が見られず(7〜9μV・sec)、130rpm時にほぼ2倍近い大きな増加を示した。これらの結果は、ペダリング運動において脚の伸展と股関節の伸展に同時に作用する大腿直筋の筋活動は、比較的軽い仕事率の場合は、種々の程度に抑制されていることを示唆しているものと考えられ。
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