研究概要 |
本研究の目的は体育、耐力医学の分野における動物を用いたシミュレーション実権による結果は、必ず人に応用されるべきであるという考えから、動物の個体における運動器系の機能測定をより正確に、定量的に行うシステムを開発し、様々な処方を行った場合の運動器への影響を個体の機能として評価することを目的とする。 平成8年度は、7年度に正常ラットの実験を基準として確立されたシステムを他のモデル動物、即ち、代償性筋肥大モデル及び老齢ラットに応用した。 代償性肥大筋に関しては、電顕的、免疫組織化学的検索を行い多数の複合型Branched fiber(CBF)が局在していることを明らかにした。このCBFは、mdxマウス(筋ジストロフィーモデル)の筋や筋線維を特異的に破壊するマ-カインを反復投与した再に出現する、筋細胞の壊死・再生が繰り返された場合の産物である (Tamaki,T et al.,Anat.Rec.,1993,1994)。従って、このCBFを多数含むこと自体は病態生理学的筋肥大モデルであることの証明であり、この筋の機能を測定することはCBF自体が筋機能に及ぼす影響を検討することにもなる。その結果、この肥大筋は単収縮、強縮ともにslow typeへ移行しておりこの結果は組織化学的検索からも裏づけられていた。しかしこれらの結果とは逆に、筋疲労テストではむしろ疲労耐性に劣るという結果が得られ、この逆説的な結果を生み出しているのがCBFの存在であることが明かとなった。 老齢ラット(2年齢以上)では、筋収縮速度及び単位筋重量当たりの収縮張力が有意に低下していた。また、正常標準ラットのm.plantarisでは通常80〜100Hzが完全強縮を得るための至適刺激周波数となるのに対し、老齢ラットでは50Hz以上の刺激に追従できないケースがしばしば観察され、筋の老化のメカニズムを考える上で非常に貴重なデータであると考えられる。 以上、この「新しい運動器系の機能解析法」は種々の動物モデルにおける運動系の生理機能を定量化する上で非常に有効な手段であり、このシステムを利用することで今後更に新しい事実が明らかになることが期待される。
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