研究概要 |
運動を習慣的に継続した場合に免疫系の応答がどのように適応していくかは非常に興味深いが,トレーニングと免疫応答に関する研究は少ない(Soppi,1982:小川,1991).動物を対象にした研究においてもトレーニングと免疫能に関する見解は一致していないのが現状である(Tharp&Preuss,1991;Pahlavani,1988;Simpson,1989).そこで,種々のトレーニング回数の違いによる免疫系への影響を血中のリンパ球と免疫臓器のリンパ球(T細胞,B細胞)を指標に検討した. 被検動物は近交系マウスC57BL/6Cr雄である.運動トレーニングは自由回転ケージで行い,期間は36週間であった.マウス32匹はトレーニング内容により4群に分けられた.a)7回/週群,b)4回/週群,c)1回/週群,d)対象群,採決は後大静脈より行った.胸腺,脾臓,リンパ節の各臓器は抽出後細かくし,細胞を1×10^7cells/mlに調整し検体とした.用いた抗体は抗マウスCD90(Thy1.2^+;T細胞),抗マウスCD4(L3T4^+;ヘルパーT細胞),抗マウスCD8(Lyt-2^+;サプレッサーT細胞),抗マウスCD45R/B220(B細胞)であり,フローサイトメーター(FACScan,LysisII)で解析した. 週当り1日の運動量はa群がb,c群に比し有意に多かった.体重はd群に比し,a,c群は有意な低下を示した.胸腺重量はc群がb,d群より低かったが,体重あたりの重量は胸腺,脾臓,リンパ節とも各群不変であった.血中のCD8はd群に比しc群で有意に上昇を示したが,CD4,B細胞は各群間に変化がなかった.胸腺のT細胞(含CD4,8)はd群間との間に差はなかった.脾臓のCD4はd群に比べb群で低下した.またリンパ節の免疫細胞はd群に比し,b群のCD4で上昇,a群のB細胞で上昇を示した.細胞の増殖能(DNA合成)については検討中である.以上の成績は長期運動トレーニングに対する血中及び各免疫臓器の免疫細胞は固有に応答し,運動回数は影響しないと結論された.
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