本研究では、高齢者の生活機能の包括的評価と日常生活の中で実施できる身体活動を個人の適性に応じて選択できるシステムを構築するための基礎資料を得ることを目的とし、以下の測定・調査を行った。 1)10代〜70代の女性80名を対象にした活動能力の加齢変化に関する測定および健康行動・生活習慣調査 (1)活動能力諸変数の加齢変化の様相は曲線的、歩行能力と脚筋力、平衡機能間には高い相関関係がある 2)運動習慣のない中高年齢女性7名を対象にした、低〜中等度強度トレーニングの効果の検討 (1)1日あたりの平均歩数はトレーニングの進行にともなって、有意に増加した (2)下肢筋力と歩行能力はトレーニング後に有意に向上し、効果を検知する有用な指標である 3)10代〜70代の男女231名を対象にした、スポーツ適性診断システムの作成・試行 (1)40代後半から50代にかけて男女とも生理的・心理的負荷に対する主観的な自信が低下する傾向がある 4)10代〜70代の女性100名弱を対象にした下肢筋力、平衡機能(静的・動的)の測定 (1)前後方向への足圧中心移動(特に後方移動時)時の調整能力は加齢にともなって低下し、姿勢変化も若年者と異なる可能性が考えられた 5)高年齢群では体力や人間関係満足度、総合的な幸福度などについての主観的評価と運動能力(移動能力)が密接に関連している可能性が考えられた。 今後の課題として、健康状態や体力レベル、幸福感などに関する主観的評価方法のfeasibilityの検討と、移動能力・姿勢保持能力を中心とした活動能力評価方法の確立、身体活動へ動機づけるためのtoolとして適性診断システムの改良をさらに進めていくことが望まれる。
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