研究概要 |
本研究では生体の恒常性維持に重要なはたらきをする免疫機能の動態に焦点を合わせて、若年期の運動習慣の高齢期身体の免疫機能調節に対する影響をラットを材料に検討した。 そこで、まずラットを次の3群に分けた。 第1群:ほとんど運動の出来ない環境で40週齢(ヒトでは約60歳)まで飼育した。 第2群:20週齢(ヒトでは約30歳)まで過激な運動を負荷し、それ以後40週齢まで適度な運動負荷を加えた。 第3群:40週齢まで過激な運動を負荷した。 以上の条件で40週齢まで飼育した後、採血し、フローサイトメトリーにより、モノクローナル抗体を用いて、リンパ球のCD3(成熟T細胞),CD4(ヘルパー/インデューサーT細胞)そしてCD8(サプレッサー/サイトトキシンT細胞)さらにNK細胞を分析し、さらにマクロファージの動態を反映するインターロイキン8を分析し、各群における免疫機能について検討した。 その結果、一生を通して過激な運動を負荷された第3群は一般に言う白血球中毒が見られ、異常白血球の増殖を高める傾向が見られた。ところが、ほとんど運動を負荷されない第1群においては異常白血球の傾向はみられないもののTリンパ系、マクロファージの機能は改善されない。そして、第2群においては、異常白血球はほとんど見られず、またTリンパ系の増殖も活発に変化し、免疫機構調節がかなり改善されているような傾向が見られた。
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