研究概要 |
運動によって大量に発生する活性酸素に対する生体防御機能を明らかにするために、ヒトと動物を対象として研究した。 ヒューマンスタディでは健康な成人男性を被検者として、85%Vo2maxの強度で30分間の持久走を負荷し、血中の乳酸、過酸化脂質、抗酸化物質(ビタミンC,E,β-カロチン,SH基)、CPK活性の分析とリンパ球DNA損傷度を測定した。鍛練者では運動前のCPK活性が高かった。運動負荷前、運動終了直後ならびに運動終了30分後における抗酸化物質と過酸化脂質レベルはヘマトクリット値の変動とほぼ一致していた。運動負荷前の筋肉損傷の指標となるCPK活性とリンパ球DNA損傷度の間には有意な正の相関関係が認められた。鍛練者と非鍛練者のいずれもリンパ球DNA損傷は運動前後において有意な変化を示さなかった。以上の結果より、本研究で用いた程度の一過性運動は、リンパ球DNA損傷を惹起しないが、運動後に遅れて二次的に惹起する可能性が示唆された。 アニマルスタディではラットを用いて90分間の水泳運動を行なわせ、運動前安静時、運動直後と60分後、及び1日後に血中と肝臓及び骨格筋の過酸化脂質濃度、抗酸化物質を血中、肝臓、骨格筋にて測定した。血中および肝臓の過酸化脂質は運動後に安静時よりも増加したが、骨格筋では運動直後に低下しており、運動1日後にはいずれにおいても安静時レベルに回復していた。肝臓中の還元型グリタチオンは運動後に安静時よりも有意な低下を示し、運動1日後には安静時レベルに回復していた。血中還元型ビタミンCが運動後に安静時よりも有意に低下していたことにより、血中ではビタミンCが抗酸化物質として優先的に利用されていると考えられた。また、骨格筋の還元型ビタミンCが運動1日後に安静時レベルに回復しなかったことから、体内ビタミンCを適量保持しておくことの重要性が示唆された。
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