研究概要 |
運動による酸素ストレスに対する生体防御機能を動物とヒトを対象として研究した。 ラットで有酸素的な持久性水泳運動による血漿、骨格筋の過酸化脂質、抗酸化ビタミンの動態を検討した。運動60分後にはいずれの過酸化脂質濃度も上昇していたが、1日後には安静時の水準にもどる傾向がみられた。1日後にはそれぞれのビタミンE濃度は安静時水準にもどっていたが、ビタミンC濃度は安静時水準よりも低い傾向であった。また、ラットにダウンヒルランニングと通常のレベルランニングを行なわせたところ、血中CPK活性はレベルランニングに比べてダウンヒルランニングで有意に高く、ダウンヒルランニングは筋損傷度の高い運動であることが確認された。血漿TBA値は安静時に比べてダウンヒル-,レベル-いずれのランニング群とも著しく高かった。また、ダウンヒルランニングでヒラメ筋、外側広筋深層のTBA値の顕著な上昇が認められた。血中ビタミンC,Eの濃度はダウンヒル-,レベル-いずれのランニングでも、その直接で安静時とは差が認められなかった。48時間後のCPK活性は安静水準に回復していたが、抗酸化ビタミンは低値を示した。 鍛練者と非鍛練者に85%Vo2maxで30分間の運動を負荷し、運動前後の核DNA損傷度を検討した。安静時では鍛練者の血漿CPK活性、自然生成リンパ球DNA損傷度が非鍛練者よりも高かった。両群とも運動負荷によってDNA損傷度は変化しなかった。安静時の血漿CPK活性とリンパ球DNA損傷度の間には有意な正の相関関係が認められた。さらに、慢性的な激運動が酸素ストレスに及ぼす影響と抗酸化ビタミン摂取の効果を水泳選手を対象として検討した。検査は練習期に行った。練習期での1日の抗酸化ビタミン摂取又は量はビタミンC:200〜290mg,ビタミンE:7〜12mgであった。練習期の血漿ビタミンC濃度は1.1mg/dl,ビタミンEは11〜12μg/mlであった。この結果はトレーニング期においても、食事によって必要な抗酸化ビタミンは摂取可能であり、体内抗酸化ビタミン栄養状態も適正水準に保持されることが示唆された。
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