本研究では、アメリカ・東南アジア・日本におけるチャイナタウンを対象に、チャイナタウンの形成および変容について比較検討し、各地のチャイナタウンに共通する普遍的性格を明らかにするとともに、各地域のチャイナタウンの地域的性格を解明し、それらの背景について考察することを目的とした。 平成9年度は、研究期間3年計画の最終年であり、下記の点に重点を置いて実施した。 1.前年度に引き続き、チャイナタウンに関する内外の関係文献を収集し、文献資料のデータベースの作成を行った。 2.横浜および神戸において、両地の中華街の現地調査を行うとともに、当該地域における華人関係の文献資料の収集を行った。 3.日本の三大中華街(横浜・神戸・長崎)を、アメリカおよび東南アジアのチャイナタウンと比較検討し、相互の差異点および共通点などについて考察した。 これらの結果、日本三大中華街は、いずれも観光地としての性格が強く、近年ますますその傾向を強めている点に大きな特色がある。これに対して、アメリカのチャイナタウンの一部(サンフランシスコやニューヨークのオールドチャイナタウン)には、日本と同様に観光地になっている所もあるが、近年、新来の華人の増加に伴い、郊外にニューチャイナタウンが形成されつつある。東南アジアのチャイナタウンを全体的にみると、現地の華人社会に対して経済的、社会的、文化的サービスを提供する機能が強く、チャイナタウンが観光地化しているところは少ない。
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