平成7年度の研究ではアメリカ合衆国南部における経済発展の地域差と分極化を確認したので、平成8年度は経済発展の地域差と分極化の要因を考察した。経済発展が続いているカウンティ(郡)の大部分は大都市圏(MSA)に含まれるのに対して、経済発展が停滞している郡の多くはアパラチア山地や海岸平野そしてピ-ドモントに分布している。そこで、経済発展の続いている地域と経済発展の停滞している地域の社会経済的変数をカウンティを単位として図化し、経済発展と社会経済的変数の関係を検討した。その結果、大都市圏内の周縁部で経済発展を続けているカウンティは、中心都市からの人口流入、増加した人々に対する様々なサービス業の増加、教育水準の高い、郊外居住者を労働力とするオフィス業務の増加、中心都市からの工場の分散および新設工場の増加などにより、就業者数が増加し、人口増加率が高まり、所得水準も上昇したことが分かった。 一方、経済発展が停滞しているアパラチア山地や海岸平野そしてピ-ドモントの一部のカウンティは、いわゆるサンベルト現象が出現する以前には所得水準の低い地域であったために、1970年代から80年代にかけて低賃金を求める工場が進出し、農村部のカウンティは1人あたり所得が上昇して経済発展を示した。ところが、1980年代中頃からは、南部全体の所得水準が上昇したので、低賃金労働という比較優位性が低下して、非農業部門の就業者数の増加が頭打ちとなった。そのため、経済発展が停滞していることが分かった。
|