研究概要 |
(1)認知地図に関する理論研究 平成7年度に引き続き,地理学,認知科学,心理学における認知地図形成に関する文献研究を行った。こうした文献研究をふまえ,今年度は,特に日常生活における認知地図形成に関する理論研究を行った。日常生活に関して,時間地理学だけでなく,人文主義地理学や構造化理論も検討し,また,心理学におけるギブソンニアン・アプローチの認知地図研究への導入も検討した。この研究成果は,人文地理学会において「都市空間における認知と行動」と題して発表した。 (2)移動手段と日常生活に関する実証研究 認知地図形成にとって,日常的な移動経験が重要であり,移動経験は移動手段によって大きな影響を受けることから,日常生活における移動手段の役割と,移動手段選択の社会的文化的な文脈を,既存の活動日誌データを用いて分析した。この成果は,共著書『都市の空間と時間』などで発表した。 (3)生活活動調査データの分析 平成7年度に実施した愛知県豊田市における活動日誌調査データの分析を引き続いて行った。トリップ・ベースのデータ形式を活動ベース形式に変換したうえで,全調査世帯の夫と妻の活動パスを,PAPD(Program for Activity Paths Drawing)によって描画し,日常生活のパターン化を試みた。この調査データには,従来採取がほとんど行われていないブルーカラー的職業従事者の生活活動に関する情報が多数含まれている。
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