本申請研究の目的はアメリカ合衆国・カナダ・オーストラリア・イタリアの都市体系を経済的中枢管理機能の分析を通して研究することにある。そして、既に同様の視点で分析を行なった日本、韓国、西ドイツ、フランスの結果と比較検討することにある。予定していた本年度の研究のうち、アメリカ合衆国については分析を終了し、その他の国々については分析中である。 さて、アメリカ合衆国については『THE CAREER GUIDE 1991』を使用し、そこに掲載されている主要民間企業4289社を対象とし、その本社数が10以上、支所数350以上のSMSAをとりあげた。分析の概要は次の通りである。 アメリカ合衆国については、本社の集中度が低いことを最初に指摘できる。本社数最多都市はニューヨークであるが、その数は185であり、全体に占める比率は4.3%にすぎない。また、本社数10以上の都市は64を数えた。州別にみれば、カリフォルニア州が最も本社が多い州であるが、それでも405社、全体の9.4%である。しかも、同州内で本社数最多のロスアンゼルスには62を数えるにすぎず、10以上の6都市を合計しても157社で、同州全体の38.8%にすぎなかった。このような傾向はいずれの州においてもみられるものであり、アメリカ合衆国の本社分布は旧西ドイツと類似した特徴をもつ。支所の点から分析すると、シカゴを筆頭に4SMSAが1000をこえる支所をもっていた。ニューヨークの支所数は最多SMSAシカゴのそれの61.3%にとどまるものである。概して人口の多いSMSAは支所数も多いという傾向を認めることはできたが、その対応関係は弱いものであった。
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