本研究の目的は、ある地域の生活の質(QOL)の定量的把握には、当該地域に隣接する地域のQOLも考慮する必要があるとの認識から、アクセシビリティの概念を用いて、隣接地域のQOLも考慮した、新しいQOLを求めるモデルを構築すること、さらにQOLに対する住民の満足度調査を通して、アクセシビリティを非考慮の場合と比較しこのモデルの優位性を確認すること、等であった。これまでの研究経過は以下の通りである。 1.愛媛県70市町村を対象にして、アクセシビリティを考慮しない場合のQOLを求めた。 2.アクセシビリティを考慮したモデルを構築し、同じく愛媛県70市町村に対してQOLを求めた。 3.アクセシビリティ考慮・非考慮の場合のQOLとの相関を見るため、アンケート調査から得られた愛媛県70市町村の居住選好順位データを用いてメンタルマップを作成した。 4.各種の指標を用いて、このメンタルマップとアクセシビリティ考慮・非考慮の場合との相関を求め、アクセシビリティ考慮の場合の相関の向上の程度をみた。以上の計算には、購入したパソコンと統計解析ソフトなどを利用した。 以上の研究の結果、満足のいく精度を持ったアクセシビリティを考慮したQOLの評価モデルが構築でき、これにより従来のモデルでは不可能であった、近隣市町村ののQOLを適切に評価することが可能となった。提案したモデルが有効なモデルであることは、メンタルマップとアクセシビリティ考慮・非考慮の場合のQOLとの相関係数を比較した結果、考慮の場合に飛躍的に相関が高くなることにより確認された。
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