本研究は、バブル崩壊不況に伴う生産調整、円高に伴う企業の海外進出、いわゆるグローバル・リストラクチャリングが国内の産業配置をいかに再編成しつつあるのか、という問題をテーマとしている。 本研究で明らかになったことは、最近の工場閉鎖、生産統合、工場立地が、物流コスト、海外との生産連携を考慮してそれらの地点決定がなされているという点である。 日本製粉の高崎工場、神戸工場、門司工場、松山工場は内陸部、または大型船の接岸できない臨海部に立地していた工場で、すべて閉鎖され、生産は大型船の接岸できる福岡工場、神戸甲南工場に集約される。住友大阪セメントは、合併後生産設備が重複する地域の生産統合を検討している。具体的には、内陸部で物流コストのかかる大阪工場、彦根工場が閉鎖される。三菱石油と九州石油は、パラキシレンの新会社、大分パラキシレンと共同で設立する。アジア向けパラキシレンの輸出増加に対応するためであり、それためアジアに近い九州に工場を建設する。 さらに日立造船、日産自動車の工場閉鎖、生産統合についても調査、分析を行ったが、これらの分析結果については、『アジア時代の国土計画と産業再配置』東洋経済新報社、1996年秋出版予定のなかで詳しく論じる予定である。
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