大阪大都市圏内における人口移動には、明らかに、都心部から放射状に郊外に伸びる鉄道に沿った方向バイアスがある、と認められた。この意味で、距離減衰効果には、方向別の変異が存在する。これは、人口移動のみならず、大都市圏住民の行動空間に関して、従来から内外の既往研究が言及してきた知見に一致している。とはいえ、この方向別変異の程度は、移動者の性別・年齢別に大きく異なっているし、就業者の場合には、その職業類型ごとにも、大きく異なっている可能性が大きい。つまり、移動者の属性を十分に配慮せねばならないことが、わかった。 また、1980年代から、我が国の三大都市圏(とりわけ東京圏)への外国人の流入がめざましかった。そこで、大阪府を事例とした、アジア系外国人の居住分布パターンを概観した。その結果、大阪市への集中が圧倒的で、都市内人口移動からみた郊外化は、確かに認められるものの、東京圏ほどの強くはないことが、明らかになった。 本研究を通じて、今後以下のようなトピックに、積極的な関心が寄せられるべきである、と痛感した。 第一に、大都市圏内における市区町村間の人口移動を包括的に表章している統計資料としては、わが国では、わずかに国勢調査があるにすぎず、微細な研究には限界がある。今後は、以上のような属性別の詳細な移動データが、できれば時系列的に、整備されていくことが望ましい。第二に、都市内移動の比較研究を追求する必要がある。これは、我が国の(大)都市圏間だけでなく、諸外国、例えば、欧米の都市とアジアの都市との比較なども、重要な課題と考えられよう。
|