100万人以上の人口規模をもつ大都市の各地域を訪問し、現地調査を実施した。 調査内容は次のとおりである。まず、各都市の市・区役所において、主として地域の人口特性および土地利用の推移と現況に関する統計資料を収集した。また、各市・区の教育委員会においては、昭和55年(1980年)以降の公立小学校児童数の推移、学校小規模化と新設・統廃合からなる立地変容、余裕教室の発生と転用の状況、および学校開放事業の実施状況に関する資料を収集した。得られた資料の内容確認には万全を期し、併せて各地域における当面の課題についての聞き取りを行った。さらに教員・住民からなる学校関係者からは、学校開放事業に関する運営の実体と問題点、複合施設の利用と管理運営の現状について、聞き取りを中心とする概要調査を実施した。 その結果、各地域を通じての共通点と相違点を見いだすことができた。共通点としては、都市中心部から周辺部へ人口が流出することによって学校小規模化と余裕教室の発生が進行し、学校開放事業は継続して実施されているものの、常住人口に限らず昼間人口をも対象としつつある点をあげることができる。相違点としては、学校小規模化に関する基準や対応が自治体によって異なるばかりでなく、大都市の中でも商業・業務中心地としての性格が強い地域では、単に教育的視点の範囲にとどまらず、常住人口維持のために必要な施設としての位置づけが強く求められている点をあげることができる。そのため、余裕教室の転用あるいは複合施設化に至るプロセスの分析には、地域的差異に対する考慮が不可欠であることが明らかになった。
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