人口が100万人規模の大都市として、札幌・東京23区・横浜・川崎・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・北九州・福岡の11地域における公立小学校の小規模化と統廃合の状況に関する資料を収集、分析したところ、各地域とも都市中心部の学校小規模化の進行が確認された。特に京都、大阪、神戸、北九州においてその傾向が顕著であった。小規模化に伴う余裕教室の発生と転用に関する資料と教育委員会からの聞き取りによると、余裕教室の転用が始まっているものの、転用形態には地域間で相当ばらつきが見られた。特別教室の確保をはじめ、住民も利用できるよう機能が複合化された小学校も多い。なかでも全市的に複合施設への改築を進めている横浜・京都は典型的な事例であることが判明した。次いで小学校の利用状況について、学校開放事業・上記の複合施設、さらに社会教育施設を対象に資料を収集した。また、複合施設の代表的なものについて、施設の構造と管理運営体制、利用者の組織と活動内容および施設運営への参画の状況等を関係者から聞き取りを行った。その結果、小学校は学校開放事業によって盛んに利用されているが、複合施設の利用はやや低調であることが明らかになった。さまざまな生涯学習施設が質量ともに充足されてきているなかで、小学校は児童数の増減や統廃合のあり方によって改築を一律に行うことができず、量的に不足している。身近に立地する小学校も、その点ですべての住民に利用しやすいとはいえず、学校との施設兼用による利用上の制約もある。そのため、生涯学習施設としての認知度が低いままで推移しているのが現状である。しかしながら、特に横浜のように早くから施設の改築が進められ、分布密度が高い地域では小学校が生涯学習施設のひとつとして認知され、公立小学校と社会教育施設の間に機能的補完関係があることが判明した。
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