平成7年度の調査では、愛知用水が通水して30年、その水源である牧尾ダムの貯水量がゼロになった平成6年の異常渇水時において、愛知用水末端水路である管理区(105地区)における維持管理と渇水対策の実態分析を行った。 (I)管理区の組合員数・区域面積には、都市化の影響によって規模のバラつきがみられるだけでなく、また、管理区が一水路の上流と下流とが異なる行政区に属することも少なくない。これらの点が、渇水時、配水管理(2日通水、4日断水)におけるロ-テーション・ブロックづくりに支障をきたした。(II)管理区の維持管理については、圃場整備事業の施行による用水路のパイプライン化によって都市化対策や水管理労働の節減効果が確認された。しかしながら、渇水時には、大部分の事業農家による個人でのバルブ操作が行われ、水路の上流部や高台での取水が困難をきわめた。このため管理区では、集落の行政組織を通じて渇水対応につき話し合いがもたれた結果、個人でのバルブ操作を禁止し、役員による役水灌漑や番水による渇水対策がとられたところが多い。(III)愛知用水の水管理上、ため池の有効性は可成りの管理区で認められている。渇水時、最高65%というきびしい節水対策を実施した段階では、ため池の運用もきびしい状況となり、下流部の畑作・果樹園の卓越した管理区では、ファーム・ポンドの有無が作物被害の度合を規定していることが明らかとなった。
|