研究概要 |
愛知用水の開発は発電・潅漑・都市用水など既存の河川水利の上流に水利権を設定することになり、木曽川から30m^3/sを取水するに当ってきびしい制約条件をもって出発することになった。このことは、愛知用水受益地域の水管理に大きな影響を与えると考えられる。 (A)平成7年度の調査では,愛知用水通水以降で最大の1994年木曽川渇水に際しての全管理区(105地区)の対応ついてアンケート調査を行った。その結果,管理区ごとの旱ばつ被害の地域性がわかっただけでなく,第1に管理主体のあり方によって節水対策(役水潅漑・番水・応急ポンプなど)が規定されたこと,第2にとくに下流部の管理区では,溜池の存在の有効性が高く評価されたことが明らかとなった。 (B)平成8年度の調査では,三好池掛り三好町新屋管理区を事例として,通水後35年間の愛知用水影響調査を行った。その結果,次の4点が明らかとなった。(a)三好池の造成により近世以降の水利慣行が廃止され上下流間の社会的緊張から解放された。(b)園芸作物など集約的土地利用がみられるようになった。(c)水の豊富化により水田のほ場整備とパイプライン化が実施された結果,その節減された労働力を工業へふりむける農家の兼業化が増大した。(d)水管理システムの基礎と水稲の集団栽培方式が確立しており,1994年夏の旱ばつにも対応することができた。
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