研究概要 |
1970年代からドイツなど先進国における農村整備は,農産物の増産ではなく,農村の自然と景観の保護・再生を図ることを主たる目的とするようになり,農村環境の向上が見られた。わが国では農作業の合理化を図るために依然として整然として画一的な農地整備が進行しており,農村の自然が失われている。本研究は,わが国の農村地域の空間整備に於ける自然や景観の保護を図るための景観生態学的手法を研究し,モデル地区を設定して実現の可能性と条件を研究することを目的とした。その結果、以下の点を明らかにする事ができた。 1.ドイツの農村環境整備に関する103編の文献を整理し,短い解題を添えることによって,今後の研究に資する資料の作成ができた。 2.わが国の自然・景観保全型の農地整備の研究は1980年代から,農村計画の研究者等によって進められたが,行政がそれに向けて動き出したのは,1990年代中頃からであった事を,わが国の文献の整理・分析より明らかにした。 3.モデル地区とした都城市横市地区では,従来型の整形・直線的な農地整備が進行中ではあるが,地元民や行政の一部に自然・景観保全型の農地整備への転換の必要性が論じられていることを明らかにした。ドイツの例に倣って,景観生態学的観点から,特に水辺の自然と景観保全を考慮した農地整備のモデル構想を作成し,その実現のための提言をした。
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