研究概要 |
本年度は,主として糸静線活断層系中部以南の地区において,完新世(過去約1万年間)の地形面を対象に,空中写真(米軍撮影の1万分の1)の詳細な判読調査を行い,縮尺1万分の1の活断層分布図を作成した。その結果,これまでの研究で,断層変位がわからなかった地域の様子や,変位様式がはっきりしなかった断層の動きが明らかになった。 1)諏訪湖以南〜富士見地区では,完新世に変位があったと考えられる地形が確認された。変位量は何れも数mで,左横ずれ(茅野市坂室)が明瞭である。富士見地区ではこれまで,横ずれを示す直接の証拠が得られていなかったが,テクトニックバルジと考えられている丘を切る断層に沿って,水系のずれ・崖のずれ(入笠湖周辺)などが確認出来た。 2)韮崎〜甲府地区では,撓曲崖が連続する縦ずれ変位が顕著であるが、これらの崖基部には最新の活動を示すと考えられる低断層崖が連続する。新しい断層崖は既存の断層崖を平野側に前進させるように、崖下に新たに形成されるものと思われる。 3)上記の間の白洲地区では,完新世の変位を示す積極的な証拠は得られなかった。また,この付近を境に断層の変位様式が,北部では横ずれが卓越するのに対し,南部では縦ずれ主体の様式に変化することをあわせて,この付近を境に活断層の活動域が変わると考えられる。 4)それぞれの地域の最新の活動時期(年代)については,今後の検討課題である。 5)糸静線・松本盆地以北について予察的な調査を行い,従来知られている活断層より西側(盆地内部)に新しい変位を示す崖地形が断片的であるが確認された。次年度継続して調査を行う。
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