本年度は、まず製鉄・窯業等の燃料林として寄与した二次林の発達と黒ボク土の生成との関わりについて研究着手した。古代・中近世の製鉄遺跡関連試料を関東平野、千葉県、埼玉県の各地域レベルについて入手し、遺跡分布と土壌分布との対応関係から洪積台地縁に分布する製鉄遺跡の後背地となっている台地平坦面における淡色黒ボク土の発達を広域的に確認することができた。すなわち、燃料林あるいは生活林としての台地二次林の存在が強い植生管理の下で、黒ボク土の腐植集積を抑制し、乾燥、風害を誘発した可能性について予察的知見を得た(1995年日本地理学会秋季大会にて発表)。事例研究として埼玉県坂戸台地において淡色黒ボク土の土壌調査、断面形態に関するデータの収集を行い、採取した土壌試料の理化学性に関する分析データを取得した.その結果、本地域の淡色黒ボク土には、二次林下で発達したと考えられる特性がみられることが明らかとなった。これを裏付けるデータの取得を目的として、現在、植物珪酸体組成分析を進めている。これらの結果の一部は、1996年日本地理学会春季大会(3月)にて発表を予定している。 黒ボク土の生成と焼畑耕作の関係については、森林経営と焼畑に関する文献調査を行い、わが国における焼畑耕作の履歴が強い地域と非アロフェン質黒ボク土の小縮尺での分布の対応関係を把握した。事例研究を行うための調査地域選定を進めた結果、東北地方南部(宮城県蔵王、岩手県胆沢周辺)に発達する非アロフェン質黒ボク土の土壌調査を実施した。現在、採取試料について炭化材を中心とする土壌成分の分析法の検討を進めている.
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