本研究は、主として非理科系大学における自然科学教育のあり方に関する研究である。筆者は大学の教育目標が「善き市民」の養成にあると考えている。「善き市民」の資質の一つには、社会の変化に主体的に対応が可能であることが考えられる。その能力養成の一方法として表題研究を考えた。 本研究では、非理科系の学生に科学観を養成するために有効な講義方法、講義内容の研究を行った。まず第一に考えねばならないことは、学生の興味を自然科学に向けさせることであった。一つの有効手段は実験を講義に組み込むことである。そこで、講義と実験との組み合わせが可能な講義内容の研究を行った。 「色」というテーマでは、色素のスペクトラムの測定、染色実験、色素の合成、色素の分離等幾つかの実験が可能であり、それら実験と講義(理論)とのつなぎをうまく組み合わせることが出来た。また、最近の学生の傾向として、化学や物理に対する抵抗感に対して、生物にはその感が少ないことがうかがえる。したがって、化学の分野でも生化学に関する内容には興味を持っているようである。そこで、「生体情報」、「薬」というテーマを研究した。特に「薬」の講義では、その開発法に自然科学的思考法を結びつけた講義が出来た。 3年間の研究からは、比較的具体的内容を示すテーマを設定し、色々な角度から追及できるようなテーマ設定が重要であることが判明した。 講義では出来うるかぎり学生との対話を心がけた。また、同時に学生に考える癖をつけることや疑問感をもたせることを心がけた。そのためには、表や図を提示し、そこから何が、どこまで判るのかという質問をする方法をとった。 サイエンスリテラシーの育成の教育は知識の植え付けの教育ではなく、思考型の教育である。その役割が一般教育にある。大学における一般教育の重要性を再認識した。
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