平成3年度から5年度に渡り文部省科学研究費補助金:重点領域研究『高度技術社会のパースペクティブ』「科学技術のパブリック・アクセプタンスに関するコミュニケーション論的研究」(研究代表者:田中靖政)の研究過程で実施されたアンケート調査を、改めて今回の課題に焦点を移し解析した。その結果、価値観については、親が子にかなりの程度影響を与えているものの、親が子に与える影響よりは教育やマスコミが与える影響の方が大きいことが明らかになった。結果として価値観の著しい世代差、性差が見られる。 また、科学技術の理解(知識)についても学校教育の役割が大きく、“分かりやすい授業“おもしろい授業"が子供の科学技術離れを食い止める鍵であることが同調査のクロス集計より明らかとなった。 『人間として何が大切と思うか』を尺度を設けて5段階評価で質問した36の項目(徳目)への回答をもとに因子分析を行った結果、主な因子として“全てが大切"とする軸、“力 vs 心の軸、“従順 vs 創造性・個性"の3つの因子が抽出できた。そのそれぞれの因子について、属性別にどのような違いがあるかを因子得点を算出してみると、“全々が大切"とする因子は父親が最も多く、次いで母親の順である。学生はこの因子得点がマイナスの値をとり全般的に『大切』に思う度合いが低いことが分かった。“力 vs 心"の軸については、男性では力、女性では心の因子が高い、そして“従順 vs 創造性・個性"の軸については、対局的に見れば、父親、母親揃って親は従順を大切とする因子を多く帯びているのに対し、学生本人は創造性・個性を大切とする因子を多く帯びている傾向がある。 価値観の解析で抽出した因子と科学技術受容との関係を見ると徳目の“全てが大切"とする因子は、科学技術の受容に対しプラスの要因として働いているが“力 vs 心"の軸については全般的科学技術では力柔和なイメージの科学技術では心の因子が受容を支えていることが明らかとなった。
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