環境教育の理論・方法論の枠組みについて、その世界的な流れを主として文献資料によって批判的に整理した。また実践家・研究者と枠組みについて、フィールドワークを行い、環境教育の枠組みが教育の現場でどのように機能しているか、実践者はどのように受けとめているかを、具体的な環境教育のプロジェクトや行事の中で調査した。調査手法としては、昨年に引き続き、参与型参加法を採用した。これは、単に客観的な観察者ということを超えて、参加者として、あるいはプロジェクトの参画者としてかかわる中で、企画メンバー同士および実施者と一般参加者が相互に影響しあい、学びあう関係の構築の過程である。この手法が日本の環境教育の現場でも有効であることがわかった。 今年度の研究で重点を置いたことに、環境教育と開発教育の連携の模索がある。それぞれ固有の課題と歴史的な流れをもちつつ、底流では深く関係しあっているこれら教育分野の担い手たちに、相互の関係をふりかえることを通してそれぞれの教育の枠組みやあり方を見直す呼びかけを繰り返し試みた。少人数でのつっこんだ研究会と、やや規模の大きな公開の研究会を組み合わせて実施することにより、結果の深まりと広がりとの両面において成果をあげることができた。 具体的な活動も動き始めている。地域には様々な問題・課題に取り組んでいる市民がいながら、ほとんど没交渉で、互いに存在すら知らないことがしばしばある。そこでまず最初に必要で具体的なプロセスとしてまず「出会う」こと、そして率直に話し合い、学び合うことを提案している。「持続可能な社会」に向かう、地域ごとのこのような取り組みの可能性については、今後の研究課題としたい。
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