平成8年度においては、CAI学習環境に関する基礎研究として、精神遅滞児の数概念の発達的特徴を検討した。さらに数概念の課題遂行時の精神遅滞児より心拍変動を測定し、その有効性を検討した。 (1)精神遅滞児における数概念の発達に関する検討 精神遅滞児おいて数刺激が等価に機能する側面に関しては、従来検討されてこなかった。音声による数詞(数詞)、数字、指表示、事物の4種の数刺激について、サンプルマッチング法により等価刺激対を検討した。その結果、精神遅滞児では、数詞と数字の間の等価関係が成立しやすいが、他の刺激の間の機能的等価性の獲得が困難なことが明らかとなった。また数刺激の等価性の発達レベルを検討することにより、CAI教材の適切性を評価できることが明らかとなった。 (2)数概念の課題遂行時の心拍変動に関する検討 数詞や数字の生成が可能であっても、数刺激間の一対一対応に困難を示す事例について援助課題を作成し、小集団指導及びCAI教材指導で課題遂行中の心拍変動を測定した。その結果、教材が対象児の発達レベルと対応した場合には、援助課題の遂行時に明瞭な心拍減少が生じることが明らかとなった。これより、対象事例において、注意集中を伴う学習プロセスが進行したことが推測できた。 援助課題の拡充を図り、本研究の成果と合わせることにより、援助による学習促進が生じている場合の数概念の学習プロセスについて研究することが、可能となった。
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