研究概要 |
本年度は,1)対象とする授業の設計及び目標備拠テストを構成し,2)授業の実施と記録及び授業成果に対する子どもと教師の認知を把握した。 これをもとに,教師の認知構造を授業内容に対する認知構造を把握すると共に,児童に対する認知構造を明らかにし,教材構造への認知と子どもの学習状況への認知の関連性を分析した。 その結果,教師については,授業内容に関わる要因は授業成果と密接に関わっており,授業認知は学習内容の難易度の構造で児童を位置付けるものであった。従って,教師の認知自体は極めて一貫性があり一次元で表現できる特徴があった。一方児童は,自分の学習成果を明確に把握しており,それは必ずしも教材の難易度による構造と一致するものではなかった。教師と子どもの学習成果に対する認知では大きな差が見られており,授業成果への教師の認知は子どもの学習成果の認知は,学習内容,子どもの個人差と関連があることが判明した。とりわけ,教師の授業成果への認知は,固定的で教材構造を基盤に子どもの学習成果を位置付けるもので,こどもの学習過程での行動を柔軟にみることができなく,できたかどうかの成果に焦点をおいて,子どもの学習を見ていることがうかがえた。このことから,教師の力量形成には,教師の学習内容の構造化の柔軟な視点と学習を成果と同時に多様な学習過程で評価する認知構造が必要であることが指摘された。
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