研究概要 |
本年度は,中堅教師を対象に,教師の技術と認知と,子どもの学習成果への認知を中心に授業実践と分析を行った。対象とした授業は,小学校の図画工作の授業で,学習成果は,子どもの描いた絵とした。授業前の指導案設計,教材作成の段階でインタビューにより教材観,児童観,目標などを把握した。授業過程はビデオに録画し授業直後の振り返りと,授業後の反省的思考を,いずれもインタビューを用いて把握し分析した。 その結果,授業設計段階では,教科固有の教材に関する認知が全面に出ることと,授業展開の技術に意識が集中する。授業中は特定の子どもを中心に学習成果(作品)に対する認知をもとに,個別の授業技術を適応する。しかし,中堅教師は教授を長いスパンでとらえており,1時間の授業はその一時点との明白な認識があり,かなり柔軟で長期的全体的な認識のもとでの授業認識をもっていることが判明した。それゆえ,目標を固定化してその基準から授業過程を振り返るフィードバックではなく,目標を次々に発展させるというフィードフォーの機能をとる。授業成果もそうした視点でとらえ,授業計画と実施には多くのギャップがあるが,これを反省的思考で広い視野でもって修正することがわかった。 また,反省的思考では,授業の技術への視点よりも,授業運営・学級経営的側面にほとんどの注意が向けられており,領域固有よりも授業一般に関わる理論的視点を求める傾向があることがわかった。
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