研究概要 |
平成8年度に取り組んだ研究課題と得られた知見は以下の通りである。 (1)授業者がもつ経験則の同定 身体と教育に関する授業実践をレビューし,その実践研究に内包された授業者の身体と認識に関する経験則を収集・分析することを試みた。その結果,教師がもつ経験則は,(a)身体とイメージの統合と乖離に関するもの,(b)身体制御と理解に関するものに大別できることを見出した。また体育科教育のみならず,国語科や総合学習の授業実践のなかにも,こうした経験則が認められること,またこうした経験則が授業づくりに大きな影響を及ぼしていることを確かめた。 (2)一輪車習得過程の特徴 初心者が一輪車を乗りこなすようになるまで(10秒以上の走行が可能になるまで)の習得プロセスを分析した。現在までのデータ処理結果から,習得に要する時間には大きな個人差が存在するものの,いずれの被験者も2〜3秒の走行が可能な段階から急激な走行時間の伸びを示すという悉無的な習得プロセスを辿ることを確認した。急峻な変化の前後における認知的方略を比較したところ,大きな差異がなかったことから,身体の側で生じた変化のメカニズムを被験者が覚知していないことが推定された。従ってこの身体と認識のズレを補正することが教授の目標になると考えられた。また一輪車に認められる飛躍的なの習得プロセスは,バイオフィードバックを用いたリラクセィションスキルの習得プロセスと近似していることも確かめた。以上の知見ついては第16回科学技術フォーラムにおいて発表した。 (3)オープンフィールドにおける身体情報測定システムの開発 心理的な緊張を反映する呼吸活動を一輪車走行というダイナミックな場面で連続測定するためのシステムを開発した。システムの概要については1996年度の生理心理学会,日本心理学会において発表し,バイオフィードバック研究に投稿,受理された。
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