新しい学力観による評価は、生徒の興味・関心・態度の測定と評価方法の確立が課題となってきた。しかし、その測定や評価の範囲は不明確で、概念の規定に関する提案はあるが実証事例が過少なためあまり理解が得られていなかった。また、数量化に馴染まないという感覚が根強くこの種の研究は遅れていた。そこで、平成7年度はファジイ理論を用いて、教師や生徒の自己評価などの主観的、定性的な評価の定量化(数値化)を試み評価のあいまいさを理論的に取り扱う研究を行った。平成8年度は、この評価方法を教育現場に適用した実践研究を試み、新しい学力観による評価では、学ぼうとする力の捉え直し、測定方法の整備とともに「感性評価」を提案した。この感性評価は、教師や生徒の感性やイメージを言葉で表現し、これを評価要素である数値に翻訳して、感性と合った評価(言葉又は数値)を求めることで、その評価は子供たちを励まし、奮起を促すものでなくてはならないと定義し、各種学会で積極的に発表してきた。 平成9年度は、本研究が相対評価重視の評価観を見直す契機となり、感性評価が相対評価に対する絶対評価の代替案として期待されることを願いつつ、研究と教育現場での実践を積み上げてきた。その結果、 ・評価方法を工夫することによって、生徒の教材への興味・関心・意欲を高めることが可能になること。 ・生徒個人が評価に参加することによって共感的な理解が生まれ、創造的な価値のある授業をすることが可能になること。 ・評価観を静的な見方から動的な見方に移行し、常に変わりうる生徒の成長・発達における不変更的特質として位置づけることが可能になることなどわかってきた。 また、特記すべき研究の成果は、 ・感性評価については、空知教育センター、空知教育工学実践研究会が中心となって美術(絵画と陶芸)の授業で実践を試みた。研究経過と成果は日本ファジイ学会、電子通信情報学会教育工学部会、日本教育情報学会及び日本教育工学協会で継続的に報告してきたこと。 ・本研究の啓蒙と教師教育の実践事例としては、島根県立松江教育センターの協力を得て、教育研究法講座「ファジイ理論の応用の教育評価とその実践」と言うテーマで新しい学力観にともなう評価方法を研究課題として教育研究法講座を実施してきたこと。現在も継続して教育現場での指導と助言を行っていること。 ・本研究も各学会、大学や教育現場から一定の評価を受けてきているこ。特に、赤堀(東工大)、磯本(名古屋市立大)、山下(早大)教授ら18大学28人と各教育機関(松江教育センター、空知教育センターなど)との共同研究体制の設置ができた成果は大きい。
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