本研究は、社会科の中にあっては比較的学力についての研究が蓄積され、客観的なテスト法によってそれが測定し易いことの多い地理学習を例として学力の測定法を工夫することにある。すなわち、近年利用し易くなった数量化法や多変量解析の手法を利用して、直接測定の行い難い学力の測定を試みるということで開始された。 平成7年度は、1.社会科学習における学力に関する研究成果の検討、2.地理的見方・考え方に関する研究及び地理学習における学力論の検討、3.学力の測定に関する他教科の研究成果の検討、4.学力測定の試行が計画され、実施された。 授業の改善のための授業の比較研究の必要性については、従来から指摘されてきた。しかし、社会科においては学力測定、授業評価自身に多くの困難があり、実際に試みられた例は非常に少ない。社会科にあっては比較的成果が多いと期待された地理的分野においても、同様であることが明快となった。しかし、教育測定の分野では、非常に多くの成果が上がっており、これら成果を社会科および地理学習における学力測定の方法の工夫のために資することが出来そうである。 本年度は、昨年度実施されたテスト結果のS-P表による分析と統計値の比較検討を行うと共に、マークカードリーダと購入したパソコンおよびソフト類を組合せ、小学校低学年、中学年児童の空間認識に関する学力測定を試みた。なお、それら児童を指導する教師と父兄にもアンケート調査を行い、影響を与えると考えられる要因群に関するデータも収集された。それらデータは500人分を越えるものである。現在、分析中であるのであるが、少なくとも処理速度は見違えるほどに改善された。今後、多変量解析の利用などによって学力を具体的に把握する方法がある程度工夫できれば、総合的な授業評価が可能となり、授業の利害得失が明かとなり、授業改善の具体的方策が示せることになろう。その意味で、この研究で学力測定についてある程度のめどがつきつつある。
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