本研究は、アメリカの初等・中等学校の社会科を中心に構想・実践されている「日系人学習」(Japanese American Studies)の検討を通して、多文化教育の意義や可能性を考察することを目的として行われた。具体的には、アメリカの社会科、特に歴史学習の中での中で、「日系アメリカ人」という一エスニック集団の歴史的・社会的経験がいかに教えられているか、州の社会科フレームワーク、様々な個人や団体によって作成された授業案、教科書や児童図書といった教材の分析を通して明らかにした。 まず、研究の初(平成7)年度においては、この分野が日本においてほとんど研究が蓄積されていないことに鑑み、アメリカ西海岸3州とハワイ州を中心に、集中的な資料調査を行った。そして、今後の研究に資するために、これら収集した資料の内、重要なもの(教科書の記述、授業案など)を訳出を行った。(報告書に〈資料篇〉として所収) 次(平成8)年度においては、これら収集した資料の分析・検討を行い、それらの学習内容の中にいかに多文化的視点が反映されているか、そのためにどのような学習方法がとられているか、その意義を明らかにした。そして、これらの考察を通して、アメリカにおける日系人学習の実践構想が、これからの多文化共生時代の日本の社会科、特に歴史教育のあり方を考える上で、思考モデルとして有効であることを指摘した。
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