日本人の敬虔な祈り、修行の場として畏敬されてきた森林内空気環境の実態を探るために山梨県身延山に入った。樹齢何百年の神聖なる樹木は神々しく、修行の場と直結した森林空気環境内には、しっかりと土壌を支えた樹根、湧き水、滝、樹木、見事な調和がそこにあった。平成7年度は、樹木の空気浄化作用に注目し、木曽のひのき林ほかの森林内空気中微生物調査を行い、クラス100程度の清浄度を保っていることを明らかにした。また森林内温湿度も鼻や喉の粘膜機能を含む呼吸機能を良好に保つ諸条件を備えていた。本年度は「森林と人の生命健康」との相互的なかかわり合いを多角的に理解し、農学、工学、林学、生物学(生態学)、建築学、環境保全学、等ですでに明らかになっている基礎研究を集大成しながら環境教育に導入するための教材開発に取り組むことであった。 教育の原点である「人のいきる力をはぐくむ」ための各領域からの融合カリキュラムとその教材を開発する上で、森林内空気環境が如何に人を生かし癒し続けてきたかを振り返ること、自然科学と人文科学を融合する哲学(法理)がそこに存在すること、そのプロセスを教育開発として授業過程に生かすことを念頭に置いた。すなわち、森林は人に対して、その浄化・加湿した空気を皮膚、呼吸器内粘膜に与え、自律神経-内分泌-免疫系の諸機能の調和を介して、人の生命の根元にある「癒し」、自然治癒力(免疫力)をもたらすことを第1の鍵概念とした。次いで地球環境規模で果たしてきた生態系の保全としての森林、水系-地系-大気系を調整する森林系の役割は、地球を生命体とした科学教育の教材であると共に「森林の果たしてきた人間教育の根元」にも向けた、人類の森林環境との共存を「樹木」を育むその基礎理念も含めて融合カリキュラム「環境教育」(環境保全教育)教材開発のための基礎研究成果である。
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