算数・数学科におけえる新学力観の実践的課題を2つに絞れば、一つは情意的目標の転移に関わる理論の構築であり、他の一つは「関心・意欲・態度」を正しく学力の中に位置づけ、これらを評価する課題を開発することである。この2つを本研究の目的とする。 新しい学力観は、その名の示すとおり、ひとつの見方・考え方であり、概念や性格が明確に規定されているわけではない。そのためまず「新しい学力」を特徴づけ、規定するための理論的な考察から入ることが妥当と考えた。また新しい学力観を実践に移す場を課題学習と考え、課題学習の理論的考察、具体的教材の吟味、目標の検討を、現職中学校教師と連携をとりながらおこなった。実際に課題学習を企画・実践し、生徒の「関心・意欲・態度」の変容を、一般化という優れて数学的な視座から、記録考察し、そのささやかな成果を、以下の題目で学会発表した。 1.『図形指導における記号の対象化の考察』(全国数学教育学会第5回研究発表会、1996年6月23日、広島市) 2.『一般化の過程における「記号の対象化」に関する考察-代数教材と図形教材の比較-』(日本数学教育学会第29回数学教育論文発表会、1996年11月2・3・4日、つくば市) 当初の予定では、「関心・意欲・態度」に関わる評価方法の開発を本年度の目標としていたが、こうした議論の精致化がともすれば数学教育の磁場から大きく外れて、教科教育の背景を持ちえないというジレンマに陥ることになった。そのため「関心・意欲・態度」を数学的に育成する場として課題学習を捉え、更に一般化を目標とすることで、「関心・意欲・態度」の性格が数学的になることを、Dorflerの研究に基づきながら考察した。
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