本研究は、教師の多様な問題関心に対応でき、授業に利用可能な地域学習情報のマルチメディアデータベースの構築を目的とする。具体的には、長崎の特性を活かした「歴史編」と「社会編」の2部門からなるデータベースを構想した。本年度は、それぞれのデータベースの入力項目を決定し、その入力データの収集を行った。その概要は以下の通りである。 1)学習指導要領、教科書、地域の副読本の記述内容を分析し、データベース構築の基本的視点を確立すると同時に、入力すべき基本項目を抽出した。その結果、「歴史編」では和洋中の文化が融合した長崎の生活文化に焦点を当てつつその国際性を基本的視座にすること、「社会編」では斜面都市長崎での市民生活の工夫に着目し、自然条件を加味した総合的視点から捉えることを確認した。 2)地域学習の実践事例分析と、現職教員の意見聴取によって、入力項目の再検討を行った。その結果、地域学習には、比較的資料等が入手しやすく教材化が容易な素材とそうでない素材があり、後者の素材についてのデータベースを望む声が強いことが分かった。 3)候補として上がった入力項目に関する専門的研究の文献の調査と、専門家の意見聴取により、データベース化の可能性を探り、最終的に入力項目を決定した。その結果、「歴史編」では「出島」「おくんち」「シ-ボルト」「しっぽく」、「社会編」では「上下水道」「坂と交通」「漁業」を入力項目として決定した。 4)それぞれの項目について、文献収集、インタビュー、現地取材等によって多様なメディアの情報を収集し、整理している。また、それらを用いて試行ソフト「長崎街道」を作成した。
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