研究概要 |
コンピュータ技術教育において限られた時間数の中で効率よく授業を展開するために,従来の実機を用いる実験を,パソコンのモニタ画面上で仮想的に行うためのシステムを構築した.これはマイクロプロセッサ(Z80MPU)のシミュレータと,アプリケーション開発ツールで制作した仮想実験教材の間で,WindowsのDDE(Dynamic Data Exchange)リンクによるデータ交換を行うことにより,仮想実験環境を実現するものである.今年度,新規に開発した教材は「電光文字表示の実験」及び「ステッピングモータの制御」である.前者は8×8のLEDディスプレイパネル2枚に任意の文字や図形を表示できる.後者は4相ステッピングモータの回転軸に取り付けた円盤を,MPUから送ったパルス信号で1ステップ回転させることにより,回転方向や速度の制御に関する実験ができる.一方,ユーザーインターフェースを見直し,(1)実験に先立って実験メニューのページを立ち上げることにより,必要なソフトエア(MPUシミュレータ,実験解説・教材等)をすべて起動して仮想実験環境を自動的に作る,(2)どの実験教材ウインドウにもシミュレータへの接続ボタンを設け,シミュレータ側におけるファイルのロードから実行までの操作を教材側からリモートで行う,等の改良を行った. MPUプログラミングの支援についてはMPU命令をデータベース化し,命令リスト中の任意の命令をクリックすると,命令の意味,クロック数,フラグ変化等の情報を見ることができるプロトシステムを作成した.本仮想実験システムを実機実験を履修した2年次の学生に試用させた結果,違和感がなく肯定的に受けとめられていることが分かった.今後は実機実験を仮想実験で置き換えることによる教育効果について更に検討を深めるとともに,仮想実験環境を含む本格的なハイパー・実験テキストの制作に取り組みたい.
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