研究概要 |
本研究の目的は,日本語教育実習において,互いの異文化要因が実習生と学習者にどのように影響し合うかを,各々の認知的・情意的変容を探ることを通して解明することにある。 前年度に,東北大学での夏季と秋季の日本語教育実習を利用してデータ収集法を吟味・検討した結果を踏まえ,平成8年度は,個人別態度構造分析と質問紙による言語学習観調査・実習授業観察,ジャーナルの記録を中心に,主として学部レベルの実習生に焦点をあててデータを収集した。また,7年度の夏季実習で,実習の前と直後と11週間後の3回の個人別態度構造分析を行ったのに加え,実習終了後6ヶ月以上経た時点でのデータも採って,時間の経過と体験の内在比,言語学習ビリ-フの変化を探った。 今年度のデータ収集において中心的役割を担った個人別態度構造分析法は,前年度までの実施ではインタビュー手順が,オリジナルな方法とは多少異なっていたのだが,平成8年度は,これをオリジナルに近づけ,7年度のインタビューに比べて,もっと被験者からのイメージの引き出しをたっぷり行うよう試みた。 結果として,実習経験のない実習生の場合,教授技術に目が向く度合いが高く,教えることにのみ意識が集中しがちであること,言語学習ビリ-フは実習前後で変わらず保持されること,教室活動を通しての初級学習者との接触では,学習者の持つ文化背景や視点から何らかの刺激を得るようなコミュニケーションは行えないことが多いが,それでも,日本語の実習授業に際して漠然と持っていた,日本語を中心手段とした異文化コミュニケーション場面への不安が実習を通して解消されることが明らかになった。
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