本研究は、非漢字系日本語学習者によって行われる漢字の構成素に対する認識方法を具体化し、その種類を明らかにすることを目的に、非漢字系日本語学習者の漢字情報特性について実験及び調査を行い、その結果に基づいて情報処理メカニズム解明のモデルを作成することであった。年度内に以下と教育実践を行った。1.非漢字系日本語学習者の漢字情報処理特性を知るには、学習者が自律的に学習していけることを目標に、記憶の関連との問題から検討していくことが必要で、中でも、漢字の構造の機能がどのように非漢字系日本語学習者の認識と係わり、獲得された漢字の情報はどのような過程を経て統合されていくのかを知ることは重要だとわかった。2.幾つかの実験結果より、(1)非漢字系日本語学習者が漢字の何を構成素として認識・記憶・検索しているのか、その際基本となる漢字の特徴的構成素は何で、構成素を巡る変化は時間的にどのように推移していくかを明確にした。(2)情報処理メカニズム解明のための予想されるモデルを作った。3.漢字学習への影響を予測するために、人間の視点のあり方と視覚の関係、及び注意に伴う視点の働きが認識や記憶とどう係わるかを明らかにする目的で実験を行った。結果、視点のあり方や働き方が刺激に影響を及ぼし、刺激の認識や記憶は刺激の位置と、刺激が特徴的か意味を有するものなのかによっても異なることが分かった。また、注意と認識、記憶の関係、視覚が記憶にどの程度関与するものなのかも分かった。4.日本語学習者の情報処理過程における漢字の形態・音韻・意味の関係の関係を明らかにすることを目的に実験を行った。結果、記憶から漢字を検索する時や漢字の形態の再生には、日本語学習者でも音韻を使っていることが窺われ、その処理は音韻符号→音韻→形態へと進むらしい。しかし、それは漢字の種類による。尚、漢字の形態の再生では音韻よりは意味の方が重要ということが分かった。
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