「岡山大学教育学部研究集録」第97号に文の長さと文構造の複雑化という視点で数量的な分析結果を発表以来、同研究集録99号に「て形」分析の結果を報告し、「て形」における日本語教育と国語教育の接点を模索した。本年度は、国語の理解領域のうち、文学教材にあらわれた接続節、特に並列的な関係や副詞的な関係で主節に結びついているものを分析し、同研究集録102号に発表した。この分析にあたって接続節相互の関係、および主節との関係を知るために複文文型の類型化を試みた。類型化にあたっては、北条淳子(1973)における包括的構成と並列的構成を基盤にし、各々の接続節の主節に対する意味機能を加味しながら、文中での接続節の数によって接続節1の類型から接続節4以上のものの類型にまで分けて分析した。この類型化によって、1文中の接続節が増えて、文が長くなり複雑化したようにみえても、文を拡大化するメカニズムは変わらないことがわかった。 また、同研究集録104号に、説明文にあらわれた名詞修飾節の分析を発表した。ここでは、1文中の接続節と名詞修飾節との関係を、文の拡大化という観点から調査し発表した。文が長くなる、すなわち拡大化するということと、文が複雑化するということは、必ずしも一致しないことがわかった。したがって、指導に際しては、文の拡大化の仕組と、拡大化と複雑化の関係を踏まえながら、文が次第に拡大していっても、そのことによって学習者をいたずらに混乱させないような配慮が必要だとわかった。 これらの結果や外国人児童の受入れ校から聴取した実情を踏まえて、国語の授業に使いやすい日本語補助教材を作成していきたい。
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