日本語教育と国語教育との接点を模索しながら、日本語教育の必要な児童が所属学級での教科学習、特に国語の授業を受けやすくするにはどうしたらよいか、どんなテキストを作成したらよいかという問題を考察してきた。今まで国語の教科書分析を通して、語彙、文の長さ、接続節相互の関係と主節との関係の類型化、「て形」の出現状況等の調査をした。さらに、文の拡大化という観点から文構造を考察する等、基礎的研究をしてきた。 本年度は、接続節を1つ含む文の類型化を複文の基本類型として、文の拡大化の視点から、教科書の文を複文構造として捉え直した。岡山大学教育学部研究集録第106号及び第107号において、光村図書の国語教科書の文学教材と説明文教材における複文構造を文の拡大化の視点で捉え直し、さらに日本語教育の視点から複文の指導法についても一つの提案をした。 それらの基礎的研究をもとに、日本語教育と国語教育との接点を模索しつつ、所属学級での国語の授業に入りやすくさせるためのテキスト作成を試みた。その試作過程で、所属学級での授業に即応したテキスト作成にあたっては、教科書教材の補助的テキスト作成だけではなく、所属学級での実際の授業展開にも合わせた複合的な視点からのテキストづくりが必要であることがわかった。国語の授業中に使用される日本語は、外国人児童にとっては、教科書教材の日本語よりむしろ難しい場合が多いからである。国語の授業に入りやすくするためのテキストづくりには、国語の一般的な事項を盛り込んだだけのテキストではあまり役にたたない。所属学級での実授業の展開と密着したテキストを日本語教育と国語教育の接点を求めつつ作成する理論的枠組の必要性がわかり、今後の継続的研究の方向性が見えてきた。
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