対象とする談話場面を初対面の会話とし、実験計画法に基づき、初対面の日本人の会話72組・外国人の日本語による会話16組を収集した(各組間で、相対する人の年齢・社会的地位・性別等のカウンターバランスを考慮した)。これらの会話を研究補助者の協力のもとで文学におこし、発話ごとの内容(話題・心理的側面)・言語形式等のコーディングを行って研究用のデータベースを制作した。コーディング方法については科学的な方法論として完成されていると判断できるものがなく、当初は試作誤差を繰り返した。そのため研究計画の進行大きく遅れたが、会話分析やプロトコール分析の手法、Cohen'sk等の統計的手法の導入により、改良の余地を残しながらコーディング済みのデータベースが一応完成している。現在このデータベースをもとにスクリプトとストラテジーの両面から分析を行っており、初対面の会話の話題の種類・展開等の類同的スクリプトの存在が示唆されている。また、従来の日本語教育では上下。ウチ/ソトの待遇意識をもとに表現形式を指導することが多かったのに対し、実際の日本人の言語行動においては、待遇意識は、表現形式よりも、話題導入のイニシアチブや話題の心理的内性/外性の方により強く反映されることが示唆されており、外国人に対する日本語教育の方法に改善を促す結果となっている。 本研究では中間段階で相当数の会話をコーディング済みのものとしてデータベース化することができ、設備備品に蓄積されている。これは広く資料を提供するという意味で今後の会話分析研究に有用なものとなると考えている。また現在このデータベースの分析を基としたマルチメディア実験素材の制作が設備備品を利用して進行中である。
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