日本人同士及び日本人と外国人の日本語による初対面の会話を実験計画法を参考として収集し、その量的・質的分析を行い、日本語教育用のマルチメディア教材を試作した。基礎データつまり、会話の内容を正確に記述しデータベースとして検索等が可能になるようにするために多くの労力を要している。これは、文字興し等の方法に確定したものがなく、また、自然な言語が相当に曖昧で、方法論の確立とデータの信頼性を高める作業が同時に進行したためである。文字興しの方法については独自のたたき台的な原則ができ、また、発話の単位等についてもohen's kappaなどの統計的手法を用いて一応の目安を設定することができた。このようにしてデータ化された会話の内容はデータベース及び表計算ソフトの両方で利用可能となるようまとめられている。会話資料などのデータの収集方法については、今後研究者間での幅広い論議と意思統一が必要である。 日本人同士の会話については、politeness theoryの見地から分析が行われ、この理論の一般的な妥当性と日本語での限界が検討されている。日本人と外国人の会話では、対人印象形成要因や会話のスクリプト的な流れに、いくつかの相違点が見いだされており、今後日本語教育への応用が提案されている。また、会話の映像・音声・文字資料をもとにマルチメディア教材が試作され、authenticな教材として試用されている。この教材の有効性等については今後も継続して検討していく。
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