1ステップ相関歩モデルを特徴づけるステップ確率の張る2次元パラメータ空間の動特性を調べた。この空間のスカラー曲率Rが-1収束することと、α曲率がα=1でゼロに収束することを数値的に十分な精度で示した。また、Rの時間的空間的変動と安定性の関係を明らかにした。すなわち、Rの大小が安定性の程度の指標になることを示した。現在、2ステップ相関歩モデルのステップ確率の張る4次元パラメータ空間を調べている。この場合、Rが一様な空間に収束しなかった。また、任意の時刻(ステップ数)で、Rが異常に大きな領域が現れた。この特異性はそのモデル特有のものかもしれないと考え、別のモデルも調べた。具体的には、停止状態の有る1ステップ相関歩モデルを考えた。このモデルのステップ確率は6次元空間を張る。メモリーと計算時間の節約のために、3次元の部分空間と4次元の部分空間を調べた。これらの場合にも、特異な領域が現れた。6次元空間中の2つの2次元部分空間についても調べた。それらはRが一定の空間に収束した。さらに、2次元曲率の特性と分布関数の性質との関係も明らかにすることができた。特異性の問題等に関しては今後もう少し調べてから出版する。上述の相関歩モデルよりもっと複雑な非平衡過程のモデルを構築した。すなわち、内部状態の変化する物体の複雑な運動を支配する確率過程方程式を、動物行動の考察から提案した。そして、この基本方程式は一般化ランダムウォーク(GRW)に変換でき、このGRWモデルは動物行動に関する最近の実験結果を解明することを示した。今後の課題は、このモデルを特徴づけるパラメータの張る空間を情報幾何学の手法で調べることである。また、複雑な粘弾性物質に対する入出力(ノイズ)のデータを標本(確率変数)の実現値と見て、情報幾何学の立場で入出力(確率変数)の確率密度関数の汎関数を推定した。
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