研究概要 |
統計多様体に関して3つの研究を進めた。(1)動的変形に伴う複雑な粘弾性物質の統計的応答特性とその情報幾何学的側面の研究[統数研共同研究リポート(81),(94)]、(2)中問統計の情報幾何学的研究[物理学会第52回年会(97年春)300p-YW-5]、(3)相間歩の情報幾何学的研究[Interdisciplinary Information Science Vol.2;物理学会96年秋の分科会4a-YL-4,4a-YL-5;物理学会第52回年会(97年春)30p-YW-16]を行った。特に、停止状態の在る相関歩に随伴した統計多様体の曲率テンソルを、重点的に調べた。この相関歩モデルのウォーカは1次元格子上を左右に運動し、時々停止する。対称運動の場合、遷移確率は2つのジャンプ確率と1つの滞在確率で指定できる。これら3個のパラメータで構成した3次元パラメータ空間を滞在確率パラメータr0によって2次元の層に分け、情報幾何学の手法を用いて各層上にRiemann曲率を定義した。この曲率は2つのジャンプパラメータの関数であるばかりでなくステップ時間Nの関数でもある。Riemannスカラー曲率Rの時間発展と、N-∞における特性を詳細に調べた。Rの動的過程に著しい特徴が現れることを発見した。Rの動的特性は、相関度と活動度によってよく理解できることを示した。N→∞でr0=1の2次元空間はR=1/2の球面に、その他の各2次元空間はR=-1の双曲面に漸近した。これらのR値は経路の規則性と確率過程の安定性と関係があることを示した。安定性との関係は量子気体のRと比較対照して議論した。r0=0と1の両層のRはそれぞれFermi気体とBose気体のRにほぼ等しいことを示した。そして、2つの層のR値の相違は安定性の違いを反映するものであることを示した。α曲率の漸近的性質も調べた。それはN→∞でゼロとなった。この特性は、熱力学系を含むもっと広い平衡系に普遍的な性質かもしれないことを示唆した。
|