当該年度(平成8年度)において報告者は、平成7年度までに提案している写像特徴密度と大局的曲率の概念を、MLP(ニューラルネット)と実データの組み合わせにより検証中である。すなわち、MLPによる入力空間から出力空間への変換過程、すなわち高次情報から他の高次情報への写像の幾何学的性質を定量的に数値化したものの集合として、非線形写像モデル自体の特徴量(以下これを写像特徴量とよび、このような特徴量によって張られる空間を写像特徴空間とよぶ)を導入し、写像の幾何的性質を表す示性数として実際に利用できるか否かを検証することを目的としてきた。 本年度の具体的な実績としては未公表ではあるが、因子分析法と判別分析法の場合について上述の写像特徴量、およびその一例としての空間曲率に関する密度関数等の諸概念の一般化を、実データを通して検証している段階である。 具体的な実験としては、一昨年度から調査中の、感情を含む音声信号を題材にし、様々な情緒の状態(喜び、怒り、驚き等)での挨拶言葉から抽出された韻律情報(周波数情報、振幅情報、時間情報)をMLPへの入力として用いた情報圧縮および情緒の判別分析を行った。この結果と従来の因子分析法、判別分析法による結果との比較を通して、MLP写像に適用される空間曲率の写像特徴密度(中間層素子数に依存する)と抽出される因子との間の関連について現在調査中である。
|